ユートピアへの憧憬
国立新美術館で開催されている「DOMANI・明日展」
文化庁の芸術家在外研修の成果発表となる展覧会。
17回目となる今回は、「造形の密度と純度」というテーマで、
緻密で繊細な仕事をしているアーティスト12名の作品が展示されています。
その中で、ダイナミックなインスタレーションと緻密な作品を展示しているのが岩崎貴宏さん。
ダイナミックなインスタレーションは『Reflection Model』
金閣、銀閣、そして山口県にある瑠璃光寺の五重塔、
それぞれの建物の造形が、上向きと下向きに連結され
宙に浮いています。
これらの歴史的建造物は、時の権力者が極楽浄土がこんな世界だろうと想像し創りだしたもの、
極楽浄土だけに、ずっと残そうと人々が力を注いできました。
必ず池があって、建物の姿を映しています。
水面に揺れる姿に、現世と来世の境界を見ていたのかもしれません。
そんな古の人達が夢見た3つのユートピア、水平線を共有するように配置し、
豊かな空間を演出しています。
一方、緻密な作品は『Out of Disorder』。
川崎市民ミュージアムのために制作されました。
なんと雑巾の繊維を使って、川崎の工業地帯を表現しています。
京浜工業地帯は、戦後、豊かな生活を求めて
大量生産、大量消費を牽引してきた場所。
いかにも高度成長時代の工業地帯を思わせる黒ずんだ色。
習字をしている時、こぼれた墨を雑巾でふくとバリバリに固まる思い出と、
ユートピアの実現を求めてがむしゃらに働き続けた工業地帯が重なったと言います。
そして、工業地帯をロケハンして実際に存在する設備を制作、
それだけに、黒ずんだ雑巾の上に出現した姿には
ユートピアへの憧れと誇りが感じられ、繊細で美しいのです。
そして、岩崎さんの遊び心、
自分の紹介のプレートの上にさりげなく置かれた送電塔
さりげないけれども、電気こそ現代の豊かさの象徴であることを物語っています。



